Kamituga-Mwengaに象徴される、コンゴ(DRC)の現状

コンゴ(RDC)のこと。
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以前、イレールが病院を作るプロジェクトをKamitugaで進めていたという話に少し触れたことがあったが、今回の記事ではなぜKamitugaだったのか、その動機について大まかにまとめてみた。

Kamitugaの地理と環境

Kamitugaはこの10~20年で急激に人口が増えている、南キヴ州・Mwengaにある小さな町である。金・コルタン・銅などの鉱物資源が豊富な土地であることから、都会から離れたリモートエリアにもかかわらず、人を惹きつけてやまない。隣接するあらゆる土地から、収入(生活の糧)を求めて、たくさんの人がやってくる。南キヴ州の州都であるBukavuからでさえ、多くの人の流入がある。鉱山を目指し、それほど人が集まってくるということは、DRC国内では仕事や生活していけるだけの収入源を他に見つけることが難しい、ということが言える。

Mwengaには部分的に森林が存在するため、鉱物資源と共に木材・炭(ガスがないので、大多数の人々にとって炭は調理に欠かせない)も豊富で、キャッサバやプランタン(バナナの一種で、加熱調理して食べる現地の主食のひとつ)などの農産物も収穫される。州都・Bukavuはそれらの木材やキャッサバの供給をMwengaに依存している。

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零細採掘による土地・女性・子どもの搾取

以上がMwengaの簡単な地理的・環境的背景の説明であるが、一方でその土地の搾取は鉱物資源の零細採掘によって行われている。そして、そこでは女性・子供もしばしば搾取の対象となる。(零細採掘を生活の糧とする人はDRC国内において、数十万人にも上ると言われる。過酷で危険な労働環境であるとはいえ、生活していくためにはそこに依存せざるを得ない状況がある。)

女性は水・木材・炭など、日常生活のための重い荷物を時には何キロもの長い距離にわたって運搬することを強いられる。そして、子供は大人では通ることのできない、鉱山の狭いトンネルを掘り進めるのに利用される。商社が関わる産業採掘とは異なり、作業場の保安がほとんど確保されない零細採掘において、トンネル内での死に至るような重大な事故は珍しくない。

より厳しくなる日々の生活環境

鉱物採掘が盛んな場所の周囲やKamituga中心部の生活環境は人口が密集し、雑然としている。KamitugaはBukavuとMwenga地区がリンクする重要な商業軸である土地柄、人の出入りが激しい。労働者や物流に関わる者など、常に人の出入りの激しい、人が入り乱れている環境が売春の温床となり、公式なデータは存在しないものの、HIVと結核の罹患率がDRC国内で最も深刻な地域であるとされている。

誰もが鉱物資源の採掘に関連する仕事に関わり、そこに生活の糧を求めることで、Kamitugaでは人々の農業放棄や森林乱獲が引き起こされた。そしてそれにより、最も基本的な食材(トウモロコシ粉・米・落花生・フルーツなど)をその土地で地産地消する代わりにBukavuに依存するという状況が生み出された。

BukavuとKamitugaの距離はおよそ180kmであるが、数か月にわたる雨期の間、非常に脆弱なインフラ(排水システムの未整備や、もともとの道路の強度不足)に起因する交通の遮断により、トラックや車などの通行をほぼ不可能にすることが少なくない。しかし、それでも主要な穀物をBukavuからの供給に頼らざらるを得ない状況は変わらない。そのため、50kgのトウモロコシ粉の袋がBukavuの二倍以上($60)もの価格になる。そういった最もベーシックな主食でさえ、多くの人にとって手に入りにくい状況が、非常に高い割合での子供の栄養失調を引き起こしている。

元々、Kamitugaの人々の農業における習慣が、ほんのわずかな種類の農作物(植えてから収穫するまでに手のかからないキャッサバ・プランタン)を耕作するのみで、トウモロコシやサツマイモなどを育てるカルチャーがないということも、この土地の食料不足・他所への依存という問題を招き、家族皆が食べるのに十分な食料が各家庭で充分に賄えないという状況を生み出している。アボカドなどの栄養豊富なフルーツは森林の中で育った野生のものが収穫されることはあっても、農作業や植樹によって積極的に生産されることがない。

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子どもを取り巻く環境の厳しさ

これら全ての地理的・環境的・文化的要因が相まって、Kamitugaでは「両親が鉱山に働きに出かけることによる子供の放棄」、「HIVや結核によって両親が命を失うことで孤児となるケース」、あるいは「食料や安全な場所を求めて家を出る子供」、「適切に治療される機会のないまま、疾患を慢性的に抱える子供の数」(Kamitugaは外来・入院を問わず、医療費が非常に高い)など、適切な環境の中で成長することのできない子供の数を膨大なものにしている。更に付け加えると、売春による望まない妊娠、子供の放棄も後を絶たない。(DRCでは現在のところ、堕胎は非合法。)

イレールはKamitugaの公的な一般病院を視察する機会があったが、そこでは仮死状態の新生児や脳性麻痺の非常に高い割合が認められたという。それらは病院の体制・システムが整っていないことや医療従事者のトレーニング不足に起因する、不十分な新生児蘇生が原因と考えられる。

こういった子供を取り巻く環境の厳しさを目の当たりにしたことから、Kamitugaに妊婦と子供を対象とする病院を建設する計画が、イレールら、現地の医師らの手によって進められていた。病院の建設が半分程度まで進んだところで、Kamitugaのアクセスの悪さ、資材不足、資金面の問題など複数の要因から現在、プロジェクトは中断している状態である。

まずはGoma市でスタートすることになったMABADILIKOであるが、Kamitugaプロジェクトの必要性について、以上の理由から、こちらも重要なものであると認識している。

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