雨宿りの愉しみ

日常・子育て
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天空のタウン、Goma

Gomaに住むようになって1か月が過ぎるころ、ようやく理解できたこと。それはGomaの天気が「山の天気」そのものであるということだった。ここの標高が1500メートルということを頭では理解しているものの、周囲にはニーラゴンゴ山があり、キヴ湖があって、関西で例えるならちょうど湖西あたり(比叡山や比良山のふもと)に住んでいるような錯覚をつい起こしてしまう。ところが、本当は比叡山(850m)よりも武奈ヶ岳(1200m)よりも高いところに自分が住んでいるということを改めて思い直してみると、ちょっと感慨深い。

DRC東部では大雑把に雨季(9~5月)と乾季(6~8月)に分けられる2つのシーズンが存在する。雨期というと連日土砂降りの雨が降り続く様子を連想しがちであるが、実際はそうではなくて、一日の中で雨の時間があるというという程度。(しかも、雨期と呼ばれる期間が9か月もあるのに、年間総雨量は沖縄よりも少ない。)その代わり、雨期シーズンに雨が降らない日/雷の音を聞かない日というのは本当にまれで、困るのは洗濯日和が少ないということ。朝、気持ちのいい太陽のもとで洗濯物を干しても、昼過ぎから雨というパターンは多い。

もう一つ、天候について付け加えると、早朝・日没後と雨の日は肌寒い。天気が良いと汗ばむ日もあるけれど、それでも自分用にも子供用にも、衣類は真夏用の服しかスーツケースに詰めなかったし、コンゴと「涼しさ」など、どう考えても結び付けられなかった。しとしと雨の日中はじっとパソコンに向かっていると、何かを羽織らずにはおれない。夜間など、タオルケットを被るだけでは足が冷え切って眠れない日もあり、まさかこんなに肌寒いとは思わなかったというのが本音だ。それでも、朝の通学でダウンジャケットを着せられた他所の子供を見ると、「さすがにそこまで寒くはないでしょう!」とツッコミを入れたくはなる。

雷の多さといい、天候の変わりやすさといい、気温といい、本当に「山の天気」そのもののGomaだ。

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雨宿りの愉しみ

そんな雨季の只中にコンゴにやってきた私が密かに楽しみにしていること。それは「雨宿り」だ。こんなに毎日雨が降る、天候の変わりやすい場所だというのに、ここでは雨具を持ち歩くという習慣がない。代わりに、雨が降ったら雨宿りをする。雨が降り始めると、道を歩いている人やバイクタクシーの運転手など、誰もが最寄りの軒先に駆けつけてそこで雨を凌ぐ。そして私はその雨宿りで、皆で肩を寄せ合う時間が大好きなのだ。

パートナーがコンゴ人ということで、多少バイアスが掛かっていることは否めない。それはそうとしても、私はパートナーと出会う前から、各国で一緒に働く同僚のコンゴ人達に好印象を持っていた。彼らは何とも、親しみやすい屈託のないキャラクターをしていて、私の中の「コンゴ人」の代表となり、ほっこりしたイメージが形成された。ところがこちらに来てみると、道端から買い物からどこに行っても「物珍しいアジア人」として受け止められてしまう。そのせいで、よほど慣れない限りなかなかお互いにリラックスして居心地の良い距離感を掴むことが難しい。私も警戒してしまうし、相手の素のキャラクターを見られる機会も少ないというのは残念だった。

ところがどういう訳か、それが雨宿りとなるとコロッと事情が変わる。降り出した雨により、偶然同じ軒下に居合わせた人たちは、皆、「雨宿りをする人」として同列になり、そこに一切の分け隔てのない、何とも不思議な一体感があるのだ。そこに居合わせることになったのも何かのご縁とでもいうかのように、お互いに濡れないように場所を譲り合う。皆で「いつ止むんでしょうね…」と、ちょっぴり困りながら、ぼんやり雨を眺めながら感じる一体感はとても居心地がいい。そして、私はいつも、その空間に居合わせた人たちのあどけない横顔をこっそり盗み見ることがやめられない。素朴で、飾りっ気のない、人懐っこいその老若男女の素顔に、私はすっかり見とれてしまう。私には、例え一人でいる時でも、どんなに頑張っても、こんなに無防備でピュアな表情は作れないなと思う。それはまるで、一切の未来や過去の心配事を横に置いた、まさに「今ここ」にいる表情だなと、胸を打たれるような感情が込み上げてくる。

お気に入りのパン屋さんの帰り道で、子供たちの学校の送り迎えの道で、私たちは度々「雨宿り」をする。そして、その度に見知らぬ人たちと肩を寄せ合う。小雨になってから出ようが、すっかり止んでから出ようが、そんなことは自由なのだけれど、軒先を出ていくときには誰もが「先に行くね。」と、軒先の同胞に軽く会釈をしてから歩き出す。その本当に自然体の空間が、人との触れ合いが、何とも居心地が良くて、日本人も天気予報を見るのを止めたら良いのにな…と、思うこのごろだ。

 

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