少し前の話になるが、先日初めてDRCのいわゆる「サロン」(美容院)に行ってきた。
DRCのサロンに初めて行ったと言うよりも、生まれて初めて子供たちを美容院なるものに連れて行った、という方が正確かもしれない。
アフロヘアとの闘い
正統アフロヘアの父・イレールの血が半分に薄まっているとはいえ、2人の娘たちの髪のケアは日本人の母である私にとって、それはそれは長い間悩みの種であり続けた。母である私が生まれながらアフロヘアであればそのケア方法は知っていただろうし、子供の性別が男の子であれば迷わず丸刈りにしたことだろう。しかし、さすがに女の子姉妹の丸刈りは本人らの同意が得られるはずもなく、ともすると虐待さえ疑われかねない。
赤ちゃんの頃はクリクリであれチリチリであれ、まだ髪の長さが短かったので、洗って乾かして終わりで済んだ。しかし、長女・あ太郎が生まれて1年ほど経ち、それなりの髪の長さになった時から私の苦闘は始まった。ヘアブラシは手当たり次第に試すけれど使い物にならない、毎日のシャンプーは彼女の頭皮をひどく乾燥させて時には頭皮を出血までさせたし、髪型においては完全にお手上げだった。
日本のあらゆるスタンダードなヘアケアが通用しない上、身近にお手本を示してくれるアフロヘアの友人もいない。仕方がないので、黒人ハーフの子供を持つお母さん達の様々なブログを探し回ることで知識を蓄えていった。(情報をシェアしてくださったお母さん方、本当にありがとうございました。直接お礼のメッセージはしませんでしたが、どんなにか助かりました。)
ちなみに、私は様々な方法を試した結果、日本ではタングルティーザーというヘアブラシと、Cantuというブランドのleave in conditioner(洗い流さないタイプのコンディショナー)を使うことに落ち着き、ネットで仕入れて愛用していた。
毎日、お風呂に入れるのに一人当たり50分近く掛かっていたことを考えると、よくもまあ風邪をひかさなかったことだと思う。(とにかく髪が絡まるので、あまり痛くならないようにしながら梳かし切るのに時間が掛かる。)洗って泡立てて→梳かして→シャンプーを洗い流した後→コンディショナーを馴染ませて→編み込み。編み込みまでをなぜ風呂場でしないといけないかと言うと、すっかり乾いてしまうと髪の毛が爆発してしまい、私にはとても扱えたものではなくなるからだ。濡れてまとまっているうちに最後まで完成させる、というのが私のやり方だった。(ずっと生乾き!?というご指摘はその通りですが、他に方法はありませんでした。)
サンタがサロンにご招待
クリクリの髪の毛の唯一にして最高の利点と言えば、トラ狩りでも散切りでも、最終的にはどうにでもまとまってしまうということ。だから、長女・あ太郎は先日のサロン初体験をするまで、生まれて5年と半年の間、一度も美容院(散髪屋さん)に連れて行ってもらうことがなかった。
12月の初めにDRCに着いてから、二人のサンタクロースへの期待にどのように応えたらよいものかと悩んでいた私はふと「あのね、もしも二人が良かったらね、サンタさんがサロンへご招待してくれるって言ってた」と、名案を思い付いた。現地の街を歩くオシャレ女子の様々な髪型を目にしていた二人は目を輝かせて、「本当!?行ってみたい!!」と見事大喜びで母の策略に乗ってくれた。それ以来、サロンの前を通ると看板を見ては「これにする!」「私はこれ!」と、大盛り上がり。
大きなスーパー以外、何もかもの価格が交渉によって決められるここDRCで、サロンの価格交渉も難航を極めた。何せ、現地人でないと認めるや否や、価格が何倍にも跳ね上がるのだ。そして、私はその相場を知る術もない。(だから、わたしは決まったものを買いに行く時には水1本でさえ、必ず相場を誰かに確認してからでないと出掛けられない。)家の近くのサロンでサービス料を聞いて回ると、ひとり$25~50と言われた。日本よりも高いなんて、なかなか大きく出るものだ。仕方がないので、家政婦NANAに安くやってくれるところに連れて行ってくれるように頼んだ。
迎えたその日。久々にいいお天気だったのは良かったが、用事をしているうちに出遅れてしまい、サロンに着いたのは12時前だった。行ってみると、店内に入りきらない人が店の軒下にもすし詰めに座っている。どうやら、とんでもないローカルサロンに着いたようだ。めいめいが大声で喋っているので、まるでパチンコ屋のようなにぎやかさ。「おおー!この感じ最高!」私は心の底からNANAに感謝した。
オシャレは我慢!?
施術を受けている殆どの人が何かを食べながら、というのを目にした時、ハッとした。そうだった。私は自分が大学4回生の時、ブルキナファソでアフリカンヘアにした時のことを思い出した。すっかり忘れていたけれど、サロンの看板のような髪にするにはエクステも必要なため、恐ろしく時間が掛かるのだった。たっぷり2時間ほど待つ間に腹ごしらえをし、ようやく自分たちの番が回ってきた。
その手裁きの鮮やかなこと。お喋りに忙しいのか施術に忙しいのか、どちらがメインなのかは分からなかったけれど、とにかくどちらも鮮やかに回っていた。もー次郎はくたびれて途中で寝入ってしまった…と思ったら、今度は「痛い、痛い」と怒り出したり、あ太郎に至っては施術の前に「もう帰りたい」と言いだす…という中間エピソードもあったが、出来上がった髪型は本人たちにも周りにも大好評だった。
ちなみに、編み込み作業が終わったらそれでお仕舞い、ではなかった。メインのラインから飛び出た髪をはさみで細かく切ったり、熱湯にエクステをポチャンと漬けてほどけにくいようにしたり、ポマードのようなものを塗って生え際の髪まで形を整える…と、工程は続いた。私にはその美意識がよく分からない所もあったけれど、細部までこだわりの詰まったサービスが終わるころには日が暮れようとしていた。
帰り道、そういえばサロン前の看板で二人が「この髪の毛が良い!」と指差していたことを思いだす。ふと、出来上がった髪型が思ったのと違うと不満に思っているのではないかと気になった。「なんか、言ってた髪型とちょっと違うくなったな。お母さん、ちゃんとおばちゃんに説明でけへんかったわ」と言うと、「何言ってんの、お母さん。気に入ってるのにそんなん言わんといて!」とあ太郎に怒られた。
無限にバリエーションがありそうな、アフリカンヘア。子ども達は次はどんな髪型にするのだろうかと、早くも楽しみになった。
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